「新大久保とK-POP」
夏の終わりに読書感想文ということで…
K-POPファンにはおなじみの有名ブロガー、鈴木妄想さんの新大久保本です。
まず最初に言ってしまうと、ガイドブックとしては使えませんw(いやグルメの部分はいいかも)
いま新大久保を語るならK-POPの要素は外せないだろう、ということでK-POPブームやカバーダンスブームについても触れられていますが、基本は新大久保という多国籍タウンができるまでの歴史と現在、未来といった内容です。
とはいってもタイトルに入ってるくらいですので現状のK-POPブームに至るまでの過程はきちんとわかりやすく説明されています。というか、現時点でこれ以上正確かつ漏れのないまとめはないのではないでしょうか。空前のK-POPブームの中で、「東方神起はもっと苦労して…」とか語りたくなってるトンペンの皆さんは、これ読んで泣いてくださいw(俺も泣いた)
あとちょっと思ったのは、この本、韓国にハマった人がもう少し深く学ぼうとするときにおそらく手に取るであろう「コリアン世界の旅」(野村進著)を読む前のワンクッションとしていいんじゃないかということですね。特に第5章の「3・11後の新大久保」のくだりは、「コリアン世界の旅」の関東大震災、阪神大震災に触れた箇所と見事に呼応して、しかるべきタイミングでしかるべき一冊が書かれたのだなぁと感慨深く思いました。
また、もっと個人的に自分の身に引き付けて考えると、「グローバル化とはなんぞや?」という疑問に対して、私くらいの年齢の(具体的には言いませんけどw)、フツーの日本人が等身大に実感・実践できる答えを示唆してくれた一冊のようにも思います。私の世代はバブル時代の栄華を若者として享受することもなく、気づいたら就職氷河期、なんか祝福されてない世代だぞおい…と思っていたところに追い討ちをかけてきたのが「グローバル化」でした。
「グローバル化」というとK-POPを語るときに外せないフレーズではありますが、「グローバル化」の時代に外へ外へと向かったのがK-POPアイドルをはじめとする韓国人だったとすると、はじめから世界との勝負を投げ、読者モデルやローカルアイドルを目指し始めたのが日本人だったように思います。
率直に言ってしまえば、K-POPのカバーダンスで活躍する子達や新大久保のご当地アイドルもその「内へ内へ」の延長線上にいるのはないのではないかとも思えます。ところがその彼ら・彼女らが国内のマスメディアはおろか韓国本国からも注目されるなど、予想外に広がりのある動きを見せています。この人たちがやがて日本・韓国のみならず広くアジア、世界に出て行くようなことがあれば、日本流のゆるくて軽くてちょっとヒネった「グローバル化」が見えてくるような気もしています。
そんなK-POPとグルメと歴史とちょっとした希望のつまった非常に読後感のよい一冊ですので、K-POPファンでなくてもぜひご一読を。
- 作者: 鈴木妄想
- 出版社/メーカー: 毎日コミュニケーションズ
- 発売日: 2011/07/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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